寒茶まつり
篠山市の二大茶どころといえば、味間と後川。
奈良の東大寺の荘園だった頃から、お茶や山椒、栗といった山の幸が特産品として有名な地です。
今回お邪魔したのは、厳冬期に刈った茶葉を使った製茶のワークショップ、寒茶まつりです。
寒い時期に収穫する茶葉でつくったお茶は、タンニンが少なく、甘くやさしい味わい。
茶農家が農作業が落ち着く冬に、自家消費用につくるもので、多く流通するものではなかったそうです。
ですが、後川のお茶畑のあるのは峠の急斜面。
おまけに一年で一番寒さの厳しい1月下旬といえば、雪が積もってるのでは?
「なるべく雪がないときを選ぶけど、まあ、足元に雪があることも多いしね。」
雪のある急な斜面での茶葉の収穫。
初夏の色鮮やかなお茶摘みとは、ずいぶん印象の違う大変なお茶摘みです。
こうしてあらかじめ刈り取られた茶葉は、大きな茶籠にたっぷり。
子どもがすっぽりはいるほどの大きな茶籠は、どこの農家にもあったんですって。
いろんなお話をききながら、色の悪いものや、枝、くぬぎなどの落ち葉を取り除いたら大きな蒸し器で、ふわっと蒸します。
あまり蒸しすぎると風味がおちるし、かといって蒸しが足りないと手もみの作業がたいへん。
今は閉鎖になった茶工場では、大きな機械で一気に蒸しあげていたそうですが
こうしてその都度蒸していくには、ちょっとした勘が必要です。
蒸しながらのおしゃべりで、猪名川町や川西市のご親戚の話題がでていました。
昔の結婚は、その地域がもつ経済的、地理的なつながりがわかります。
後川は南にぬければ猪名川のイオンにもいけちゃうのです。
ちょっとうらやましいな。
蒸しあがったら冷めないうちに揉んでいきます。
「筵が動かないようにお腹で押さえて、筵の目を上手につかってぐっぐっと。」
見よう見まねで、もそもそやってるうちに
どんどん蒸しあがった茶葉がやってきます。
茶葉が筵にあけられるたび、寒い講堂に白い蒸気がひろがります。
茶揉みは熱いうちでしたっけ。急がないと。
ずらっとならんでの茶揉み作業です。
少しもんでは隣の人に渡していくと
最後の人のところで、きれいに揉めた茶葉ができているという寸法です。
揉み手がたくさんいればこそできる流れ作業ですね。
作業に夢中になってもくもくと揉みつづけます。
蒸したばかりの茶葉はとてもあたたかで
講堂はお茶の葉のよい香りでいっぱいです。
疲れたでしょう、と休憩に淹れてもらったのは、もちろん熱々の寒茶。
昨年の寒茶まつりでできたお茶です。
刺激が少なくて甘いやさしい味わいに、ほっとしながら
なんだか茶工場、お茶のラインみたいだねえと
隣で揉んでいた知らない人とも笑いあって、また作業。
揉みあがった茶葉は、乾いた筵に広げられます。
気が付けば、講堂はお茶のじゅうたん。
ワークショップ参加の私たちの作業はここまでですが
このあと、主催の後川郷づくり協議会の皆さんが
お天気をみて、屋外にひろげたり、しまったりといった地道な作業を何日もくりかえします。
きれいに乾いたところで、はじめて寒茶が完成なんだそうです。
うーん。お茶づくりってこんなに手間がかかってるんですね。
最後に、事務局長の倉康隆さんが、後川のお茶にまつわる話をしてくださいました。
お茶の木の手入れが、品質をきめるのだけれど、
高齢になると急斜面での茶畑で作業が続けたくてもできなくなること。
担い手の減少は、生産量が減るだけでなく、
後川茶本来の質のよい味わいを損ねてしまいかねないこと。
生産農家が減少し、地区の茶工場も閉鎖になった現在は
後川郷づくり協議会を中心に、後川茶の保存のため寒茶の生産を続けていること。
高齢化と担い手の減少は、地域の特産品の存続にも影を落としているようです。
できあがった寒茶は、
3月18日に開催されるイベント「後川春こいまつり」で販売されます。
興味を持たれた方はぜひいちど来てみてくださいね。