この人にきいてみた

梅谷美知子(うめたに みちこ)さん 民宿「うめたんFUJI」オーナー

温かみのある看板と可愛らしいお花が目に留まる民宿「うめたんFUJI」。
この看板とお花は、地域の方のお手製のものだそうです。
曇天でじめじめした空気もパっと明るくなるような笑顔で迎えてくださった梅谷さんから、地域の人とたくさんのつながりがあるのも、この温かい雰囲気が理由なのだなと感じました。

【「うめたんFUJI」とは】

「うめたんFUJI」は丹波篠山市で地域おこし協力隊として活躍した梅谷美知子さんが任期後、丹波篠山市大芋地区で営んでいる農家民宿です。うめたんFUJIのこだわりの1つは「おしゃれすぎないこと」。そこには、“おばあちゃんの家のようなくつろげる場所にしたい”という思いがありました。

「暑い寒いもたしかに厳しいけれど、それも1つの体験かな」と語る梅谷さん。
実際に室内に入ってみると、古民家にあまり手を加えすぎずに自然の状態でくつろいでほしいという思いが感じ取れる、落ち着いた素敵な場所でした。

【お客様との関わり】

うめたんFUJIのお客様のほとんどは、車で1時間半以内で来れる京阪神の人。秋のシーズンは枝豆狩りの体験が人気ですが、半数は丹波篠山に来たことがあり、うめたんFUJIや周辺でのんびり過ごされる人が多いとか。

「びっくりするような出来事がなくても、ここに来て夜遅くまで喋って、楽しく過ごしていることが1番嬉しいし、民宿をしていて記憶に残る。」

その朗らかな人柄とくつろぎを大切に作られた場所によって、お客様はより一層丹波篠山ののどかな雰囲気を楽しめるのだろうなと感じました。

【料理のこだわり】

梅谷さんが民宿を営む上で大切にしていることのもう1つは料理。「この地域ならではの美味しいものを味わってもらいたい」という思いが込められています。その中でもおすすめの料理はジビエ料理だそうで、「シカは美味しいのにみんな美味しい食べ方を知らないし、お店も少ないから食べる機会があまりなくて。でも捕らないとどうしても山にいるシカの数も増えるし、捕るだけ捕って食べないのではなく、美味しく食べてもらえるようにしたい。」と自身のジビエ料理への思いを教えてくれました。

「お客様が初めて鹿肉を食べたけど美味しかったと言ってくれることやリピートしてくださることが嬉しく、やりがいになっている」

【どうして丹波篠山に来たのか?】

丹波篠山に来るまでは、東京で7年ほど飲食関係で働いていた梅谷さん。将来的に自分のお店を持ちたいと考えており、修行の意味で東京のレストランで働いていたそうです。そんな中、自分のお店を東京で開くか地元の兵庫に戻って開くか、これからのことについて悩んでいた時に、たまたまお客さんから地域おこし協力隊の制度を教えてもらったとのこと。

「町に関わりながら起業もできるのは面白そうだ!」と感じたことがきっかけで、兵庫県に帰ることを決断。当時は県内で協力隊の募集は3カ所あり、その中に丹波篠山があったそうです。そして、もともと外国人の観光に興味があり、これからもっと観光地としての魅力が出てくると感じた丹波篠山への応募を決めたそうです。

【丹波篠山での暮らし】

丹波篠山の暮らしで印象に残っていることを尋ねると、「地域みんなの仲が良く、距離が近いこと。」と梅谷さん。丹波篠山の人はみんなが知り合いで、同じ名字の人が多いことからお互いの名前を「○○ちゃん」と親しくあだ名で呼び合ってるところを“素敵だ”と感じるそうです。

また、屋台を出す地域の春祭りも印象に残っていると言います。移住して間もない梅谷さんは、春祭りといえば前日から「業者を呼んで,電気工事をして…」と、準備に時間がかかるイメージを持っていたそうなのですが…、地域の人から告げられた集合時間はなんと祭りの3時間前!
祭りに行ってみると、長年続けてきた行事とのことで地域の人の連携力が強く、3時間であっという間に準備ができたことに「びっくりした!」そうです。

【丹波篠山の魅力】

丹波篠山の魅力について尋ると、「魅力はいっぱいある」とのことでしたが...
その中でも、日本の文化や昔ながらの日本人の良さが守られていることだと教えてくれました。詳しく聞いてみると、野菜や味噌といった自分で作れるものはなるべく自分で作るという文化や、市の条例だけでなく地域の人々の想いによって守られてきた美しい景観が一番の魅力だと語ってくれました。

【移住を考えている方へメッセージ】

移住を考える上でのポイントを聞いてみると、「何のために移住するのか整理しておくことが大切ですね。」というお答えが。

「田舎は人付き合いや草刈りなど思っているよりも忙しいです(笑)」
なんとなくのんびりしたいから移住するというよりも、都会にはない地域の人との深い付き合いを楽しめるかがポイントだと語ってくれました。

「みんなで愛着を持って、土地を維持していくことを楽しみたい人に移住をおすすめしたい!」と笑顔で話す梅谷さん。
地域の方との繋がりを大切にされている梅谷さんの温かいお話から、丹波篠山の魅力がひしひしと伝わってきました。

うめたんFUJI
〒669-2611兵庫県丹波篠山市大藤65-3
営業時間 7:00~0:00 年中無休 完全予約制
ホームページ:umetanfuji.com

2022年6月25日 
聞き手 兵庫県立大学環境人間学部 足立陽菜, 木村芽生, 新元里奈, 谷水さら